画面を通してオリンピックを見ていると、やはり、なにがしかの感動とか、元気が伝わってくるものだと思う。数々の結果の中で、特に印象に残ったのは、陸上の400mリレーだ。「トラック競技80年ぶりのメダル」のフレーズが連呼された。併せて、選手たちの止めどない喜びのシーンも画面にくり返された。まるで金を獲ったかのようなその喜びの様子に、観ている者までが引き込まれる。ある意味、メダルの色、順位よりも、選手達の達成感の程に、我々傍観者の感動は支配される。そして、400mのあの4人、塚原、末続、為末、浅原選手達が異口同音にもらした、「諸先輩方の努力の積み重ねが・・」という言葉の背後を考えると、再びメダルの重みを感じることができる。なにしろ80年ぶり、その他の順位を見ていても解るが、短距離トラック競技という性質が、黄色い肌のアジア人には本来的に不向きであることは、多くの人々の暗黙の了解のものである。日本陸上界ではメダルという言葉すら口に出せない目標不明の時代もあったという。誤解を恐れず言うなら、結果に結びつかない無駄な努力とも捉えられがちなこの競技を、うまずたゆまず、80年努力し続けてきた。そこに敬服するのである。一人の人間の数年の努力とは異なる、地道に、かつ壮大な世代間のバトンタッチを行いながら、ようやく獲得されたメダル。
そう考えるとこの4人のメダルは、清々しい、と思う。
2008. 8. 24