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2007. 8. 5

第4(日)説明の付かない営み

午前中、ミツロウワックスづくり。ネット上で販売しはじめて何年経つだろう。自分の設計した内装に用いるためというのが始まり。樹脂ペイントとは異なり、時々塗り足す必要があるので、お施主さんは買い続けるという理屈になる。なのに市販のモノは高い。蜜蝋を溶かしてテレピン油と混ぜるだけで出来るならと自分で作り、低価格にした。せっかくいくつか作るのなら、ついでにサイトに掲載して販売の姿勢を曝してみるのもいいだろうと、極めて遊び半分に展開した。数年が経ち、少しずつであるが、注文の頻度が増えてきた。在庫が切れるとお客さんが思いの外残念がる。設計の仕事も当時よりも明らかに混雑気味になってきて、遊びであったミツロウワックス販売は遊びとして温存することの難しさを感じるようになってきた。一度販売を休止したが、注文者の熱意に対し丁重に断るのに心労を費やす。矢面に立つ塩谷が、お断りの電話ファックスに時間を取られる。それなら作る手間に払いたいと。
久しぶり、自分一人で作った。夏だと蜜蝋が溶けやすいので1.5時間ぐらいで15缶出来た。一つ一つの缶々に9杯ずつ高温液状の蜜蝋ワックスをお玉で入れていく。テレピン油は芳香族の溶剤なので臭いもきつめ、楽しい作業ではない。自分は日曜日の朝からなにをしているのだろうと、思わないでもない。詳細は省くが金銭的な利益というようなものでも決してない。設計の仕事はひとりの施主さんと、住宅であれば最低でも1年はお付き合いするという意味で、キャベツ158円ハイサヨナラの仕事とはちがうのだといつも言い放っている。だがそういう当の本人が、行ったこともない地域、会ったこともない人との缶々を介した一期一会に、なにがしかの重みを感じているということになる。クレームが出たらそれを契機にして止めようと思っているが、そう思うと不思議にない。ようはこれを続けている理由が自分でもよくわからないのである。
午後は心機一転を計るべく、事務所で明日の段取りを済ませた後、犬と宝満山(868m)に登りに行った。標高はそれほどでもないが、延々と縦移動が続くので、楽とはいえない。普段よりも息切れが深く、身体に応えたせいか、「なぜそんなにしてまで山に登るのか」と一瞬だけ考えてしまった。今日は、理屈では説明のできない挙動の一日、感覚的にはすこぶる充実の一日、であった。

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