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2008. 6. 6

第38(日)ハンディーキャップ

不必要に朝早く目が覚めてしまうことがある。寝なければいけないと思っているうちに雑念が、こちらも不必要に膨らんでくる。いっそのこと諦めてテレビをつけたり、本を読み始めたりしてみる。早朝のテレビに格別用事があるわけはないが、今朝は思いも寄らぬ番組に出くわした。「回峰行に生きる」教育テレビ5:00~比叡山のあの有名な苦行である千日回峰行を満行した人の一人、光永覚道氏のインタビューであった。「行の期間は7年。白装束に草履履きで頭には開花前の蓮の花を象ったヒノキの笠を被り、途中で行が続けられなくなったときに自決するための死出紐と短刀を携える。行を許されるのは、百日回峰行を終えた者の中から、更に選ばれた者だけ。延暦寺の記録に残る満行者は、50人ほど」(番組案内より)
行が完成されないと、本当に自決するのかという素朴な疑問はさすがにインタビュアーも触れなかったかと思われる。覚道氏に限っていうなら、自決云々の前に、自らの腰には既に椎間板ヘルニアという短刀が突き刺さっていた。肉体的ハンディーとのすさまじい格闘であった。25KMの山道を一日も欠かさずおよそ1000日行う行者にとっての「腰痛」は泣きっ面に蜂、これ以上の不幸はないというもののはず。一歩一歩が激痛であり、激痛が一日一日を貫通した。常人を超えた強靱な精神、肉体を超えることのできる精神。
そういえば、今週、友人の平松剛から新しい著書が届いた。6年近く連絡を取り合っていなかったから、よほど自分から声を掛けようと思っていたところに、自らの新作を一冊、出版社経由(献本)でよこすという、粋な交信をしてきた。装丁は前作(光の教会・安藤忠雄の現場/建築資料研究社2000)<大宅壮一賞>と同じ和田誠氏。そのイラストがまず目に飛び込んだ。今度のタイトルは「磯崎新の「都庁」戦後日本最大のコンペ」。出版社は文藝春秋に切り替わっていた。建築専門書からの離脱という彼の思いが伝わってくる。磯崎新氏のコンペの一件は建築設計の関係者は皆知っていることであるが、平松は当然のことながら、周知の事実の背後に隠れている事柄を、内側からえぐり出している。まだ数ページではあったが、知らなかったことが。磯崎氏は建築コンペという闘いの以前に、持病の腰痛とも闘っていたという。こちらは歩くことによる激痛ではなく、座することによる痛みだった。
健常であっても為すことの容易でない難関に、身体的なハンデが重なる。そこで手を緩めるか、構わず突き進むかが試されているのだろうか。

 

 

 

 

2008/6/1 現場、終日雑工事

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