放射冷却の家

「大気の窓」 中西秀明 2023  steel0.8t/sus2.0t

放射冷却の家

High-E House 2011-

2023「窓計画」展 『大気の窓』として

カテゴリ
ワークショップ/イベント 住宅 計画案
設計助手
米満公平 野見山雅也
共同設計者
中西 秀明(鉄部)
特記
2011年に一度まとめた住宅の未来形プロトタイプ「放射冷却の家」再稼働。今回は、放射冷却機能を備えた新素材のリリースにより、グッと実現性が増そうとする折下、建築家石山修武率いる「窓計画」展出展の機会を得て、彫刻家・中西秀明氏交えて、実験箱をアートとして公開する機会を得た。
放射冷却の家
天文学用語に、「大気の窓」というのがある。地球上を覆う大気は、電磁波にとっては基本的に障害物である。その中で、 特定の波長域の電磁波に対して透過を許す帯域が複数あって、そこだけは宇宙からの、あるいは地球から発せられる電磁波の往来が成り立つところである。それらを広く「大気の窓」という。 代表的な「大気の窓」の一つは、波長0.35-1μm間の「可視光の窓」だろう。ここに窓があったから、地球に陽光(紫外線、可視光線、近赤外線)が絶妙な割合でふりそそぎ、地球上の生物を育むことができている。もう一つ、人間の生 活に関わる、あるいは熱力学的に重要な帯域、8-13μmに窓がある。ここは、赤外線の中でも、中~遠赤外線の領域であり、金属以外のほとんどの物質の分子振動を容易に起こさせる、つまり熱に変わりやすい電磁波の帯域である。この 窓を通して、地球は日夜関わらず熱を放射することによって、気温を一定に維持してきた。 もし、この「熱線の窓」を通して、宇宙(約-270°C)に向かって熱を放射しつづける建築ができたら、夏はさぞ楽し かろう。それが簡単にできない理由はいくつかある。一例として、昼間の太陽光(近紫外線)は反射し、遠赤外線領域は放射する、という要求矛盾。(反射率+放射率=1だから) この問題を、波長で切り分けて克服しようという表面素材が現れた。まだ、製品として未完だとの開発者言だが、建築 へのイメージは計り知れない。さて、夏のどこをクールダウンしたいか。寝室は、エアコン派と非エアコン派が睨み合う主戦場なのでは? まずは、そこに放射冷却機構を備えてみてはどうだろう。
放射冷却の家
実験箱は、図らずも棺桶を思わせる佇まいになった。だが、これは死んだ人のためのものではなく、よく生きる人のためのものである。「大気の窓」を眺めるためには、自らの熱を確実に遠い宇宙の絶対0度に届ける素材である必要がある。外側はspacecoolにその性能を任せるとして、内側は、吸収率の高い素材。今回は、鉄の彫刻家・中西秀明氏にその窓をお願いした。風景はなにも見えない代わりに、宇宙(の冷熱)を感じる窓。内部で臥人となると、熱を加えられた鉄の素材が自然に作り出したこの窓に風景が現れる。

そのまえ