本日はメンテナンスデー、午前中は他の建築にすだれを掛けに、午後はここに。いわゆる一年点検、この間、不義理していたのでどんな風であろうかと楽しみにしていた。すると開口一番、というか最初に目に飛び込んできたのは、開口部より前線を張っている朝顔のファサードであった。元々これを構想しての鉄骨ベランダではあったが、その実像に、まず驚いた。漆喰の白や、ガルバリウム鋼板、亜鉛メッキドブ付けの銀灰色という色彩淡泊な外装を背景に、朝顔は映えていた。内観からの景色も、葉を透過した緑光が言うまでもなく美しい。月初め、藤森照信氏の授業を潜った時に、「建築と植物は本来的に似合わないものである」という逆説的な発言に興味を覚えたが、この手前味噌はどうだろう。少なくともこれらのプランターの列は植物が建築から生えている「ように見せる」ことを端から断念している。安くて素っ気ないありふれたものがずらっと並ぶ潔さを・・冠をかぶる倉庫用ベンチレーターも納得のはずだ。もう一つ、室内の漆喰壁が実に美しい状態を保っていたこと。小学生に満たない小さなお嬢ちゃん達の無邪気はきっと漆喰に刻印されるだろうと思っていたがアテははずれた。30年後、彼女達がどこかで「家」を構想の時、「自分は子供の時から漆喰壁で育ってきたので、その扱いは解っているつもりです。」などと旦那を差し置いてぶちまけたなら、コリャ痛快、漆喰党冥利につきるなー、などと考えながら、今日の一日が更けるのである。