建築途中の構造体を美しいと思った経験は設計者なら誰しもあるだろう。この段階で留められるならと、あり得ない夢想がほとばしる一瞬である。今日ではめずらしくない、ガラスの建築・・150年前に温室として誕生した建築・・それが人間のための空間になったと言う意味では、フレーム=構造体だけが存在する建築など夢想でないという時代でもある。だが、これらの建築は、いかに遮熱ガラスを用いても、壁の断熱性能にはなりえない。一言で言えばエネルギーをたくさん用いることによってかろうじて演出された空間である。ましてや、そのようなガラス建築群は高価なものである。
ここにもし、(半)透明な断熱材があれば、壁は断熱性能のある採光面になることができる。ポリカーボの透明波板を内外に貼って中空部分をそれで充填するなら、断熱壁であり、屋根であり、かつ採光面であり、なによりも安価に空間をつくることができる。その透明な断熱材としては、既に世にある製品を用いれば事足りるが、プチプチではどうかと思った。豪邸のプールに落ち葉が入らないために開発されたシートが、梱包材として世界に爆発し、そして今度は断熱材として新しい使われ方を得る。そして、その透過する光が思いの外美しく、プチプチというチープな名前がとたんに不相応になる。名前はプチプチハウスか?、ポリカハウスか?、フレームハウスか?。説明的な命名にはこと欠かないが、断熱材に囲まれた空間ができるということで、実直にInsulatorHouse(インシュレーターハウス)と名付けられた。略してiHouseとなるが、Apple社の商品開発を先回りしたつもりはない。そもそもこちらは、彼らが近づけないほどにローテクなものづくりである。110701