2024. 8. 24 permalink
10ヶ月ぶりにDETENTEに出向いた。オープンからもうすぐ1年。2度の災難から力強く立ち上がられた若きオーナーシェフの顔色を伺うと同時に、人工の丘が少しは成長したかと思い、事務所スタッフ交えて、撮影班として入らせていただいた。
朝10時、オープン直後から、来客が続々と来場する。4.7万人の武雄市民が愛する洋菓子店なのだろう、と車の出入りを、丘の上から見下ろす。
さて、改めてこの建築も、「現場でつくる」が少なからず徹底できた工作履歴であったことに改めて気づく。木造のフレームは、基本をプレカットとしつつも、瓦の庇や、5.4mスパンの木造架構ベンチなど、各所、地元の若手大工さんの手加工に支えられたものであった。
各所のアイアンワークは、バンセットの山本さんに、何度も現場に出向いてもらい、試作を重ねてもらい、それぞれに据え付けた。弊社の監理ではなかったが、スツールやテーブル&椅子なども、彼の仕事によるもの。一般的に店舗の椅子の類は、オープンが差し迫る頃に、納期や金額や、耐久性の担保から、既製品一択となってしまうことがままあるが、ここは、オーナーの相森さんが、最後まで、作ることを諦めずにお店全体の最後の仕上げとしてよく踏ん張られたという感がある。もともとそういう感性の持ち主でもあったともいえる。
その他、地元の左官の山口さんも、これからの九州の左官を担うに値する、優れた左官屋だ。時には奥さんと小学生の娘さんもしょっぴいて、親子三人で工事に取り組んでいたのが印象深い。外壁の土の配合は、何度も打ち合わせして、彼の確信に従った。内部には、地元の麦わらを調達してもらい、大空間いっぱいに散りばめた。佐賀平野特有のガタ土のセメントレンガも、ステンレスのケーキ型に詰めて、今回初めて作るものだ。試作、試作によく付き合ってくれた。
あわよくば作る、もので買ったものは、玄関などのドアハンドルの真鍮金物ぐらいか。買ったものとはいえこれも少量生産のものだから、そのような存在を放っているようである。
この、あわよくば作る、ということで、納得されていく空間というのは、どういうことなのだろう、と我を振り返る。僕たちが本能的に避けようとしているのは、大量につくられて売られているもの?皆が無批判に大量消費しているもの?説明がまだ的を得ていないが、とにかくDETENTEは、そういった意味では、まぎれもなく「この場所で作った建築」と少し自信を持って言えそうである。