4年前に、改良盤を注文いただいて、それ以来のご連絡をいただきました。同じものをワンセット追加製作してくださいの御依頼でした。なんとその間、ご結婚なされ、ご夫婦でこの家具を用いたいということでした。夫婦茶碗ならぬ、夫婦家具。能楽の装束を納める家具が、既製品では見つからないので、制作ということなってしまうのですが。
昔は、装束を綺麗に納める寸法の家具の類いは、あったのだろうかと、古のことを想像するも、イメージはどこからも得られませんでした。
唯一、能楽の舞台は、いうまでもなく、無塗装の無垢材の世界だから、その素材感覚だけが、新しい家具に連綿させる手がかりでした。杉7tの幅広の天井材は、いつ見ても壮観。だが、4年前と事情が異なり、今回は岐阜の建材屋から陸送で取り寄せる羽目になったようです。世の中の移り変わりからして、そうなることは、想定内とはいえ、こういう美しさを現代に用いようと思っていても、素材が全く出回らなくなってしまえば、実現しなくなります。
こんな小さなスケールのものづくりであっても、ふと思えば、森の未来と関わっている、という気がしてきます。
ついでながら、事務所御用達の家具工場が、空港近くで立ち退きとなり、この糸島の三雲に移っていました。正直遠くなってしまいましたが、今日は天気も良く、道草をして古墳の脇でお昼ご飯を食べました。調べるとこのあたりは、以下の歴史ある場所でした。
「三雲・井原遺跡は南北1,500m、東西750mの範囲に広がる遺跡です。集落域と墓域を合わせて約60haを測るわが国を代表する弥生時代の拠点集落であり、中国の歴史書『魏志』倭人伝に記される「伊都国」の中心的拠点集落=王都に位置付けられます。」(糸島市HPより)
かつては、大陸との交易の中心地、今で言うなら東京に他ならぬ地帯だったことは、想像すらできないほど、今は鄙びた風景です。でもなんとなく、装束という響きとも重なるような気もしました。