博多百年蔵の敷地、南東の縁に建つ酒造りのための新棟。既存の煉瓦造煙突と呼応する新蔵の煙突。あちらは、かつてコークス煙を排気するための煙突、こちらは、蒸米(酒米を蒸す工程)の時に発生する、蒸気。お米が蒸される時のなんともいえない香りは、お酒を造っていることの証。町並みとして供出されるように。
新しい酒蔵を造るにあたり、その蔵が表現すべきことはなにかということを当然ながら、考えました。まずは、蔵としての形、蔵としての素材です。木造で、土蔵壁で、瓦屋根で、というのであれば、既存の蔵との違和感のない連続が計れますが、さすがにコストや機能との合理性がはかれません。しかし全くの現代構法と素材では、建築=モノとしての脈絡がつながらない。車5台分のピロティーを支えるための鉄骨フレームがまずできあがり、そこに屋根用折半の金属は張り込まれ、漆喰が塗られ、檜の大扉がはめられ、つまりは、現代構法と、蔵らしい素材との、組み合わせとなりました。
このV字柱が、18mのピロティーの中間のタテ荷重、ヨコ荷重を支えています。根元は橋梁構造でおなじみの支承。
1F貯蔵+瓶詰め室。2F吹き抜けは、ホイストによる搬出入経路
プラント機器設置前のガランドウの蔵。Hビームはホイストレール。棟木部分の隙間は、連続式ベンチレーター。