築50年の木造住宅の建て替えである。新しい住宅への要望は、大きく2点、静かに暮らす終の棲家であり、中庭を見ながら過ごす家。
内外部の全ての壁は左官仕事(砂漆喰塗り、わら漆喰塗り、赤土塗り)。現代住宅が常用する商品建材の一部から自由に(サイディングフリー、ビニールクロスフリー、アルミサッシフリー、レバーハンドルフリー)。
全ての間仕切り壁は、H2200のラインで留まっていて、天井まで達することがない。空気の遮断が必要なところは、枠なしのガラスランマを仕込んでいる。
これにより細長い円環状の空間は、ぶつ切れずに繋がり、空間の伸びやかさを実現している。
中庭といってもその大きさによって、その空間の役割や質が異なることに気づき、数種の平面図を作製した。結果的には、敷地面積をいっぱいに用いた平面となり、中庭はこの家の主庭となった。 そこに赤土を塗り、居間がこの中庭空間を専有するような開口計画とした。中庭型の住宅の多くは、中庭側に全ての開口部が集まり開くことによって、中庭を介して各室が繋がるものが多いが、ここでは、中庭は居間だけのものとなっている。夫婦二人の家族構成が導いた結果でもある。
バスタブからの眺め。大きな木製の開き戸を開けると、バスヤードとバスルーム室内が繋がるトップライト開口部は見えないが、網戸だけが仕組まれていて、青天井から雨が降り込む。隣家との視界は遮断されているので風呂場からそのまま涼み出ることができきる。